国連本部
ニューヨークにある国際連合の本部には加盟国193ヵ国の国旗と、バチカンとパレスチナの旗が並んでいる。
ちなみに国連はニューヨークにあるが、国連本部の土地は全加盟国の共同所有である。
国連本部はニューヨークの観光名所の一つになっていて、修学旅行生や観光客に人気があり、会議場などを案内してくれるガイドツアーもあり、意外と開かれた場所である。
国連の旗
国連の旗は北極を中心にして各国を平等に配置していて、その周りには平和の象徴であるオリーブの葉がある。
なぜオリーブの葉が平和の象徴かというと、旧約聖書に出てくるノアの方舟の話で、40日間雨が降り続けて地球上が洪水になってしまい、方舟に乗っている人が陸地を探すためにハトを放した。
すると、オリーブの葉をくわえたハトが戻ってきて、そのことにより洪水が引いたことが分かり、それでオリーブの葉は平和の象徴となった。
国連の主な活動
国連は平和のためにどんな活動をしているのかというと、人権や平等に関する国際的なルールを作ったり、貧しい国への食料支援など様々な活動を行っている。
いろいろな仕事を実際に仕切っているのが関連機関のWHO、ユネスコ、ユニセフなどである。
新型コロナウイルスではWHOが世界に情報を伝えることをしていたが、これも国連の活動の一つである。
WHO(世界保健機関)
感染症の研究を集約して情報発信する。
ユニセフ(国連児童基金)
子どもを争いや貧困から守るための活動。
国連は健康、人権、経済、教育など様々な問題を解決することで、世界を平和にするための活動をしている。
国連総会
国連総会
全加盟国が1国1票で意思決定をする。
毎年9月に通常総会が開かれ、必要があれば随時開催される。
安全保障理事会
平和と安全を守る国連の中で、最も重要な集まりが安全保障理事会である。
特に国際的な紛争について緊急で対応しなければならないときは緊急で招集される。
例えば、他国に侵略した国に対して経済制裁しようなどと決定したら、そのルールは絶対で全加盟国が従わなければならない。
今回の「ロシアのウクライナ侵攻」をなぜ国連で止められなかったのかというと、安全保障理事会の物事を決める仕組みに問題があったからである。
国連加盟国193ヵ国ではなかなか話しがまとまらないため、安全保障理事会は15ヵ国で構成されている。
その15ヵ国は常任理事国5ヵ国と、非常任理事国10ヵ国に分かれていて、常任理事国は常に同じメンバーで、非常任理事国は任期2年で地域別に選挙をしている。
日本はこのまえ当選したので、来年から非常任理事国に入る。
日本が非常任理事国に入るのは12回目で、これは非常任理事国の中で最多である。
常任理事国5ヵ国には特権が与えられていて、1ヵ国でも否定したら決まらない拒否権が与えられている。
安全保障理事会で何かを決めるときには、原則9ヵ国以上の賛成で決まるが、常任理事国が1ヵ国でも反対したら決まらない仕組みになっている。
例えば14ヵ国が賛成しても、常任理事国が1ヵ国でも反対したら決まらない。
常任理事国5ヵ国
アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア
今回のウクライナ侵攻は常任理事国であるロシアが拒否権を使い、戦争を止めることができなかった。
今行われている日本や欧米のロシアに対する経済制裁は自主的なもので、国連で決めたわけではないので、実は経済制裁していない国の方が多い。
ミサイルを連発する北朝鮮に対し、もっと厳しく経済制裁しようという提案にはロシアと中国が拒否権を使って反対するなどしていて、平和を守ると言いながら何もできない国連は無力だと批判の声が高まっている。
常任理事国は戦勝国
なぜ常任理事国5ヵ国は特別扱いなのだろうか?
それは第二次世界大戦で勝った国だからである。
そもそも、国連は第二次世界大戦の戦勝国によって作られた組織である。
なので、戦争で勝った国の中心メンバーが常任理事国になった。
第二次世界大戦は枢軸国と連合国と呼ばれた国々の戦いで、日本やドイツなどの枢軸国が負け、アメリカやソ連などの連合国が勝利し、勝った側の連合国が「戦後の平和を守ろう!」と言って作ったのが国際連合である。
国際連合は英語で「United Nations」で、これを直訳すると「連合国」である。
「United Nations」を「国際連合」と略すのは日本独特の略し方で、これは日本が国際連合に加盟する時に、戦った連合国に加盟するというのに違和感があったため「国際連合」と読みかえた。
日本は枢軸国で連合国の敵だったため、国連の加盟は認められたが常任理事国に入っていない。
第二次世界大戦のとき、アメリカとソ連は共通の敵ドイツがいたので協力し合い、関係は良かった。
しかし、大戦が終わってから次第に対立するようになっていった。
実は、第二次世界大戦で最も多くの犠牲者を出したのがソ連で、約2700万人もの犠牲者を出した。
ソ連は多くの犠牲を払ってドイツに勝ち、戦争終結に貢献したので常任理事国になった。
拒否権ができた理由
しかし、「拒否権」なんてあったら話しがまとまらないのは当然なのに、なぜ「拒否権」という仕組みがあるのだろうか?
それは、ソ連が要求して拒否権を作ったからである。
当時の中国は「中華民国」で、今でいう台湾だったので、常任理事国5ヵ国の中で社会主義はソ連だけだった。
そのため、何かあったときにソ連とそれ以外で対立し、孤立してしまい、ソ連に不利なことを決められたら困るということで「拒否権を作れ!」と強く要求した。
この「拒否権」があるために、「ロシアのウクライナ侵攻」も「北朝鮮のミサイル開発」も止められない。
国連の機能不全
しかし国連ができて80年近く経つのに、なぜいつまでも変わらないのだろうか?
それは、最初に拒否権を認めてしまったので、変えようと言っても拒否権が発動してしまい変えられないのである。
国連憲章という国連にとって憲法のようなものがあるのだが、国連憲章を改正するには常任理事国も含めて3分の2以上の賛成が必要で、常任理事国が拒否権を発動したら変えられない。
拒否権を持つ常任理事国にしてみれば、「自分たちに不利になるような改革はイヤだ!」ということである。
先月の23日、バイデン大統領は日本の常任理事国入りを支持したが、現実的には難しい。
以前から「常任理事国を増やそう」「日本などを加えよう」などの議論はあるのだが、反対する国があるため話しが進まない。
国連の機能不全は今に始まったわけではなく、東西冷戦時代からあった。
東西冷戦
戦後~80年代 アメリカとソ連が対立
東西冷戦時代、アメリカとソ連が対立していたので、国際紛争が起きると、必ずどちらかの国が拒否権を発動していた。
例えばアフリカで紛争が起きると、アメリカとソ連の代理戦争のようなものなので、それを止めようとすると、どちらかが拒否権を発動していた。
そのため、「東西冷戦時代は何も決まらない」「国連なんて効果ない」と言われていた。
しかし、東西冷戦が終わった途端、お互い協力し合い国連が機能し始めた。
それが今回、「ロシアのウクライナ侵攻」でまた機能不全に陥ってしまった。
それでは「その国追放!」と、国連そのものから追放できないのだろうか?
その国を追放しようとなると、国連総会で決議をすることになり、3分の2以上の賛成が必要となる。
当然ロシアの仲間、中国の仲間もいるため、追放するのは難しい。
そして追放していなくなってしまったら、逆に誰も文句を言えなくなってしまうので、むしろ国連の中にとどまってもらった方が良いのではないかという考え方である。
旧敵国条項
国際連合は戦勝国が作ったもので、国連憲章の中に旧敵国条項というものがある。
旧敵国条項
旧敵国が侵略行為を行った場合、侵略された側は安全保障理事会を通さなくても軍事制裁をすることができる。
例えば、どこかの国が侵略をした場合、被害を受けた国は「何とかしてください」と言って安全保障理事会が開かれるのだが、旧敵国がよその国を侵略した場合は、侵略された側は安全保障理事会に訴えなくてもすぐに攻撃をしてもいいということである。
この旧敵国条項は、国連総会で3分の2以上の賛成があれば削除できるのだが、なかなかこれも進まない。
そして中国にとっては、日本が敵国であった方が都合が良いのではないかと考えられている。
例えば、尖閣諸島を中国が占領するようなことがあれば、日本は当然自分の領土を守るために反撃をする。
そうすると中国は「中国の領土に日本が攻めてきた」と言って、中国は国連を通さず、直接に懲罰を与えることができるという言い訳ができてしまう可能性がある。
そのため、中国にとっては旧敵国条項を残しておいた方が、日本を牽制できると考えているのではないかとの見方がある。
国連の活動資金
国連の活動資金は、それぞれの国の経済力に応じて、加盟国で分担金が決まっている。
1番多く出しているのがアメリカで、2番目が中国である。
以前は日本が2位だったが、中国が急成長して2位になった。
日本の分担金は8.033%の3位で、年間約300億円を負担している。
国連には各国から採用されて働いている国際公務員がいて、世界中で平和に関する活動を行っており、国連職員と呼ばれている。
国連職員は分担金が多い国ほど多く採用される。
しかし、日本は約8%も分担金を出しているのに国連職員になりたい志願者が少なく、日本の枠を他国が埋めている状況である。
逆に中国は分担金が2位なので、今のままだと国連は中国人だらけになってしまう。
「国連を都合のいいように動かそう」というのが中国の方針なので、もっと日本も頑張った方がいい。
(2022/6/18放送 池上彰のニュースそうだったのか‼より)