ロシアのウクライナ侵攻 プーチン 侵攻までの準備 


しかしながら、NATOが動くことも考えられたのに、なぜプーチンは侵攻に動いたのだろうか。

日本の報道では、プーチンが暴走したかのように思えるが、これはプーチンが暴走したのではなく、アメリカや欧州が出てこないことをテストプレイして慎重に判断して実行している。

2021年1月にバイデンがアメリカ大統領に就任したとき、ウクライナの国境にロシア軍を集め、バイデンが強く警告するのか、あまり反応しないのかどうかをプーチンはみていた。

さらにその後、「おそらくNATOが出てこないだろう」とプーチンに思わせる出来事があった。
それがクリミア・プラットホームである。

2014年に、ウクライナの南部にあるクリミア半島を電撃的にロシアが奪い取ってしまうクリミア併合という出来事があった。
これに対し、ウクライナは世界中に「助けてください」とアピールするために
2021年8月、クリミア・プラットホームを開催する。
クリミア・プラットホームとは、各国政府の首脳級の人たちに助けを求めるためのイベントだった。

しかし、アメリカはエネルギー庁長官を派遣するにとどまり、クリミア・プラットホームに首脳級を出すことはなく、さらに、欧州各国も首脳級を出すことはなかった。

ウクライナとしては、クリミア・プラットホームで「クリミア半島は自分たちのものだ」と訴えたかったのだが、逆に「世界はクリミアのためには動かない」ということをプーチンに知らせてしまうイベントになってしまった。

そして、時を同じくして2021年8月、バイデンがアフガニスタンから米軍を撤退する。つまり、アメリカは世界の警察をやめて撤退するという意思をはっきりさせてしまう。

クリミア・プラットホームに首脳級を出さない、アフガニスタンから実際に撤退するという動きから、「NATOは出ないだろう」ということをロシアは確信するに足る時期だった。
その後、ロシアはさらにウクライナの国境に軍を増員していく。

その上で、侵攻する20日前の2月4日に露中会談をおこなう。
そこでのプーチン大統領と習近平による会談で、NATOへの批判を表明する。
それと同時に、ロシアが経済制裁を受けている間の協力体制について話し合っていたのではないかと言われている。

しかし、中国はなぜロシアに対して協力的なのだろうか。それは中国側からしても、アメリカの動向を見たいからである。
ロシアとウクライナ、中国と台湾というのは、とても類似した関係なので、アメリカがどう動くのかを見たいのだ。

2021年1月にウクライナの国境に軍を集めてみて、バイデン政権はウクライナにあまり関心がなさそうだと分かった。
8月のクリミア・プラットホームでは、アメリカも欧州もあまり積極的ではないことがみれた。
さらに、アメリカは積極的ではないどころかアフガニスタンから軍の撤退を実行した。

こうした流れから、「NATOの派遣はない」ということがわかる。そしたらあとは、経済制裁しかないのだが、経済制裁がいかに強くても耐えられるように中国と握手をしておこうというのが、
2月4日の習近平との会談である。

そこまで準備して、プーチンは2022年2月24日にウクライナに侵攻する。

プーチンは決して暴走していたわけではなく、1年かけて周到に侵攻の準備をしていたのである。





(中田敦彦のYouTube大学 【ロシアのウクライナ侵略①】NATOが動かない理由と、プーチンの恐るべき戦略 より)



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