G7(ジーセブン)
G7(ジーセブン)
世界を代表する7ヵ国が直接顔を合わせ、様々な問題解決の方針を決める。
G7の「G」はグループのGである。
G7=Group of Seven=7ヵ国のグループ
日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、フランス、カナダ


来年のG7は広島で開催されるが、そもそもG7は何のために集まっているのだろうか?
G7が始まったのは、1973年にオイルショックが起き、フランスが「世界の経済を立て直そう!」と提唱して世界の先進国が集まったのがきっかけである。
オイルショック(1973年)
中東戦争をきっかけに世界経済が混乱
G7は、そもそも世界経済を話し合う会議だったのだが、最近では環境問題や安全保障などの世界的課題について話し合う場になってきた。
1997~2013年まではロシアを含めてG8と言っていたが、ロシアによるクリミア侵攻をきっかけにロシアを追い出し、再びG7に戻った。

ロシアによるウクライナ侵攻は今年始まったわけではなく、8年前のクリミア侵攻から戦争は続いてきた。
ロシアにとっては、G8から追い出されることに特に痛みはない。
G7とよく似た集まりでG20というのもあるが、これは中国やインド、ブラジルなどの経済発展の著しい国を加えて経済や金融などを話し合っている。

TPP(環太平洋連携協定)
太平洋をグルッと囲んだ国々で「貿易を活発にしよう!」と言ってできたのがTPP(環太平洋連携協定)である。


普通、貿易をするときには関税という税金がかかり、商品の値段が高くなるのだが、その関税を無くすことで貿易をしやすくし、「一緒に経済成長しよう!」という目的である。
例えばヨーロッパだとEUがあり、EU加盟国どうしで関税を無くし発展しているので、こっちはこっちでそういうものをしましょうという動きだった。
よくスーパーで見かけるカナダ産の牛肉や、ニュージーランド産のキウイなど、外国産の輸入が増えてきたのはTPPができたからなのである。
OECD(経済協力開発機構)
先進国が集まって、みんなで協力しながら途上国を支援していこうというのがOECD(経済協力開発機構)である。
日本を含む、38ヵ国がOECDに加盟していて、OECDに入ると先進国と呼ばれることになる。
つまり、「豊かな国だから貧しい国を助けよう」という集まりがOECDである。

日本は1964年に加盟が認められ、このとき、やっと日本も先進国の仲間入りだといって、日本では結構盛り上がった。

つまり、日本はそれまでは「支援される側」だったのが「支援する側」に回ったということである。
OECDは俗に「先進国クラブ」と言われている。
OECDの加盟基準は先進国であると同時に、「資本主義」で「民主主義」の国である。
なので、ロシアや中国は入っていない。
世界の経済の発展のためには教育、雇用、環境、健康、エネルギー、経済など、幅広い分野で現状を知る必要があり、そのためにOECDは様々な分野の統計をとったり調査している。
だから、色々なグラフやデータにOECDが出てくる。


OECDや国連関係など、日本が国際機関に出しているお金は年間約4000億円で、結構な額である。

QUADとIPEF(クアッドとアイペフ)と中国の脅威
QUAD(クアッド)
オーストラリア、アメリカ、日本、インドの4ヵ国。
自由や民主主義など、共通の価値観を持った国で環境問題、先端技術などの色々な面で協力しようという集まり。
IPEF(アイペフ)
経済協力の集まりで、インド洋と太平洋の周りの国々でもっと貿易をしましょうというもの。

他にも色々な集まりがあるが、今、日本やアメリカが特に力を入れているのが、このQUADとIPEFである。
なぜ、この2つが重要なのか?
それは、QUADとIPEFは中国に対抗するためだからである。
近年、中国の振る舞いは世界的な問題になっていて、「中国の問題行動に対策していこう!」という狙いがある。
中国は日本の海で密漁し、それを中国の工場で加工して日本に輸出したり、ガラパゴス諸島まで行きサメを乱獲し、ヒレだけを獲って海に放すというようなことをしている。


さらには、南シナ海で軍事施設を造るためにサンゴ礁を埋め立てて島をどんどん造っている。
そのために砂を大量に採取していて、環境破壊に繋がっている。
その結果、台湾の島によっては砂浜が消えてしまったところも出てきていて、海の生態系の破壊も問題になっている。



中国による密漁・乱獲・環境破壊が世界中で問題になっているので、QUADで対策しようということである。
例えば、QUADの4ヵ国で「人工衛星で違法操業を監視しよう」などの対策を立てている。
他にも、中国は途上国にインフラ整備としてどんどんお金を貸し、そのこと自体はいいことなのだが高金利で返済期間が短く、結果的に借金を返済できなくなり、そのインフラを中国に奪われてしまうということが起きている。

つまり、とても返せないようなお金を貸して港などを造らせ、返せなくなったらそれをもらうということである。
借金漬けにされて事実上中国に土地を奪われてしまう、そんなことが色々な国で起きており、中国の罠にはまったと言われている。
そこでQUADでインフラ整備を引き受け、その国がちゃんと返せるお金の貸し方をしましょうと対策をし始めた。
中国の脅威
このように、世界各地で中国の振る舞いが問題になっているが、その一方でこんな調査結果がある。
日本の外務省が東南アジア9ヵ国に「信頼できる国・機関はどこ?」とアンケートを取ったところ、国だけで見ると日本は2位で、1位は中国となり、日本より中国の方が信頼されているという結果になった。

なぜ中国の方が東南アジアの国々から信頼されているのかというと、中国は貿易額が大きく、相手国として信頼できるからである。
東南アジア諸国にとって1番の貿易相手国は中国で、中国の莫大なお金がそれぞれの国に流れているので、信頼できる国の1位は中国になってしまった。
このままでいくと、中国は2030年までにアメリカを抜いてGDPで世界1位の経済大国になる見込みで、アジアではアメリカの存在感がだんだん薄くなってきている。
TPPからアメリカが抜け、今は中国が加盟を申請中で、さらに中国が主導して作ったRCEPが今年からスタートするなど、中国がどんどん影響力を強め、アメリカの存在感は薄くなるばかりである。

アメリカ抜きでアジアがどんどん進んでいくことに対し、アメリカは危機意識を持っており、このままだとアジア太平洋は中国のものになってしまうと焦っている。
そこで、苦し紛れにバイデン大統領が打ち出したのがIPEFというわけである。
IPEFの具体的な内容はこれからの話し合い次第であるが、重要なのは日本の役割なのである。
(2022/6/18放送 池上彰のニュースそうだったのか‼より)